大家好:
我是茶迷 Andy。
農薬残留量の基準を満たすことは、お茶の品質管理における最初の関門です。
完全な農薬残留検査報告書には豊富な情報が含まれていますが、
数字や化学物質名がびっしり並んでいると、どこから読み始めればよいか分からなくなる方も多いと思います。
今日は、お茶の農薬残留検査報告書の読み方をご紹介します。
お茶の農薬残留はどのように検査されるのか?
現在よく使われている農薬残留スクリーニング方法は、大きく二種類あります。
簡易検査法(酵素阻害法)
農薬がアセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinesterase)の活性を阻害する特性を利用して、残留の有無を判定する方法です。
かつてはこの酵素をハエの頭部から大量に抽出していました。
ハエの頭部にはアセチルコリンエステラーゼが豊富に含まれており、抽出効率が高いためです。
現在では商業的に精製された酵素試薬が主流となり、ハエの頭部を収集する必要はなくなりました。
簡易検査法は迅速かつ低コストで、現場での初期スクリーニングによく使われます。
ただし、有機リン系(organophosphate)およびカルバメート系(carbamate)農薬にしか対応しておらず、感度は約 0.1〜1 ppm 程度で、精度も実験室の検査方法には及びません。
結果はあくまで参考値であり、正式なコンプライアンスの根拠にはなりません。
酵素阻害法の原理と応用についてはこちらの記事をご参照ください:
https://www.intelligentagri.com.tw/xmdoc/cont?xsmsid=0M068492401417538149&sid=0N275556516249181280
公式検査方法
認定を受けた検査機関(SGS、Eurofins など)に依頼し、政府が公告した標準方法で分析する方法です。
今回の報告書では AOAC Official Method 2007.01(2007)が使用されており、
アセトニトリル(acetonitrile)抽出と硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)による分配を組み合わせた多農薬一斉分析(multi-residue analysis)です。
今回は 502 項目の農薬が対象となっています。
飲んで分かるのか?
ほぼ不可能です。
農薬残留の濃度は通常 ppm(百万分の一)、あるいは ppb(十億分の一)レベルであり、人間の味覚では感知できません。
味で農薬の有無を判断することは信頼性がありません。
農薬残留報告書は何を示しているのか?
今回の SGS 報告書を例に、重要な記載項目を説明します。
製品名とロット番号
甜香凍頂烏龍茶003、ロット番号 LOT 0032602。特定のロットに対応しており、トレーサビリティを確保します。
問題が発生した際、ロット番号をもとに範囲を特定し、影響の拡大を防ぐことができます。
申請者と製造者
本報告書は遊山茶訪茶業股份有限公司が委託したもので、製造者も同社です。
これは政府による抜き取り検査ではなく、メーカーによる自主検査です。
自主検査は、受動的に抜き取り検査を待つのではなく、積極的に品質管理に取り組む姿勢を示しています。
試験方法
AOAC 2007.01 は一般的な農薬の多残留分析に適した方法ですが、対応範囲に制限があります。
方法によって検出できる農薬の種類が異なる点については後述します。
試験結果(2 ページ目)
今回は 5 項目の農薬が検出されました。
「検出」は「不合格」ではありません。
数値が法定の最大残留基準値(MRL)を下回っていれば合規です。合否の判定は報告書自体の役割ではありません。
定量限界(LOQ, Limit of Quantification)
報告書の中で最も見落とされやすい項目です。
クロルフェナピル(Chlorfenapyr)を例にとると、LOQ は 0.05 ppm です。
つまり、残留量が 0.05 ppm 以上の場合にのみ報告書に数値が表示されます。
それ以下の場合は「不検出」と表示されますが、これはゼロを意味するものではなく、機器の信頼できる検出下限を下回っているということです。
台湾の基準値と日本の基準値
報告書には両国の基準値が記載されており、輸出対応の確認に役立ちます。
同じ農薬でも国によって基準値が大きく異なる場合があります。台湾で合規な数値が、日本や EU の基準を満たすとは限りません。
付録(3 ページ目以降)
3 ページ目以降の付録には、
今回「検査対象とした農薬項目」とそれぞれの定量限界が 502 項目にわたって記載されています。
これは検出結果ではなく、この報告書の検査範囲を示したものです。
付録に記載されていても 2 ページ目の結果表に現れていない農薬は、定量限界を下回っているということであり、
完全に存在しないということではありません。
報告書読解のポイントまとめ
農薬残留報告書を見たときは、まずロット番号と試験日を確認して正しいロットに対応しているか確かめる、
次に試験方法を確認してどの農薬が対象かを把握する、そして結果欄の「不検出」の本当の意味を理解する、
最後に台湾基準だけでなく輸出先市場の MRL と照合する、という手順で確認することをおすすめします。
検査機関の能力はどう確認するのか?
報告書の信頼性を判断するうえで最も重要なのは、
報告書を発行した検査機関が ISO/IEC 17025 の認定を取得しているかどうかを確認することです。
ISO/IEC 17025 は試験所・校正機関の能力に関する国際規格であり、
認定を受けた機関は試験方法・設備・人員能力・データ品質が第三者機関によって検証されています。
台湾の認定機関は財団法人全国認証基金会(TAF)です。
以下のリンクから検査機関の認定範囲を検索し、依頼した試験方法が認定範囲内に含まれているかを確認することができます:
https://accreditation.taftw.org.tw/taf/public/basic/viewApplyItems.action?unitNo=0860
TAF の認定マークが必ずしも報告書に印刷されているわけではありません。TAF の公式サイトで直接確認するか、検査機関に認定証を請求することをおすすめします。
残留値が基準を満たしていれば、そのロット全体に問題はないのか?
必ずしもそうとは言えません。以下の点に注意が必要です。
サンプリング誤差
お茶は様々な産地から仕入れられることが多く、大ロットでは複数回のブレンド(blending)が行われます。
ブレンドが均一でなければ、サンプルの代表性が不十分になる可能性があります。
検査に提出した 1 サンプルが、ロット全体の平均的な状態を反映しているとは限りません。
「不検出」はゼロではない
報告書は定量限界を超えた項目のみを記載します。
クロルフェナピル(LOQ = 0.05 ppm)を例にとると、
実際の残留量が 0.04 ppm であれば報告書には記載されませんが、農薬は確かに存在しています。
基準値に近い数値はリスクが高い
台湾の MRL が 0.05 ppm で、検査結果が 0.048 ppm であれば合格ですが、基準との差はわずかです。
ロットが大きく分布が不均一な場合、別のサンプリング箇所では超過する可能性があります。
このような場合は検査回数を増やすか、サンプリング箇所を広げることでリスクを下げることができます。
四分法によるサンプリングは代表性を高める実用的な手法です。実際の操作はこちらの動画をご参照ください:
https://youtu.be/aHS-MaBoLok?si=KZ4Plf3D0qc1sqkc&t=166
数百種類の農薬が対象とされている中で、他に注意すべきことはあるか?
今回の報告書で使用された AOAC 2007.01 は広範な農薬に対応していますが、よく知られた盲点があります。
それが極性農薬(polar pesticides)です。
極性農薬とは水溶性が高く、水と一緒に移動しやすい農薬のことです。
身近な例としては、嘉磷塞(年年春)(Glyphosate、代謝物 AMPA)や固殺草(Glufosinate、代謝物 MPPA)が挙げられます。
これらの農薬は一般的な農薬とは化学的性質が大きく異なるため、AOAC 2007.01 のアセトニトリル抽出では十分に回収することができず、分析結果が正確に反映されません。
したがって、報告書にこれらの農薬が記載されていないのは、存在しないからではなく、そもそも検査されていないためです。
極性農薬の有無を確認するには、専用の分析方法を用いる検査機関に別途依頼する必要があります。
現在の標準的な極性農薬分析方法は QuPPe-PO Method(Quick Polar Pesticides Method for Plant Origin、V12.1、2023)であり、
酸性化メタノール抽出と LC/MS/MS を組み合わせることで、これらの農薬を効果的に検出することができます。
まとめ
お茶の農薬残留検査は「全数保証」ではなく「抽出検証」という考え方に基づいています。
合格という結果は、提出されたサンプルが現行の法規基準を満たしていることを意味しますが、ロット全体が 100% 安全であることを保証するものではありません。
いくつかの重要な原則を覚えておいてください。
自主検査は合理的なサンプリング計画と組み合わせることが大切です。
基準値に近い数値には十分な注意が必要です。
試験方法の対象範囲が、報告書で分かることの限界を決めます。
輸出目的がある場合は、国によって同じ農薬でも基準値が大きく異なるため、輸出先市場(日本、EU など)の MRL との照合も必ず行ってください。
希望この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
また次回お会いしましょう。
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